電脳塵芥

四方山雑記

トルコ国籍男性が準強姦未遂罪に問われた冤罪事件に対するメモ


https://twitter.com/ShinjukuSokai/status/1787352641842061387

 この「プナルバシ容疑者ら」の画像は外国人、特にクルド人による性犯罪が不起訴になり司法がおかしくなった、的な投稿でよく使用されるある意味でいえば「鉄板ネタ」ではあり、それがまたぞや拡散した格好となる。上記のインフルエンサー「Z李」にしてもそうだし、今回の話題の発端となったであろうはまとめサイト的なネットメディア「JAPAN NEWS NAVI」が火元となり、それがネット右派系のインフルエンサーらによって拡散する。


https://twitter.com/JapanNNavi/status/1787284600580161886


https://twitter.com/mattariver1/status/1787285158481301520


https://twitter.com/CRNK_HZ/status/1787416486069608790


https://twitter.com/CRNK_HZ/status/1787627180895420568

ただ今回が今までの拡散と異なるのはコミュニティノートが付いている様に事件の判決文を載せた大阪弁護士会奥村徹氏のブログが確認されたことで言説の状況がやや変わる。ただこの判決文について触れる前にこの「話題」、もっと言ってしまえばこの「ネタ」がどの様に扱われて来たかに触れる。
 まず事件が発生したのは2015年(平成27年)の12月27日。この事件が2016年2月22日に読売や産経で記事となる。

【読売】 難民申請中に女性乱暴容疑、トルコ人2人逮捕
難民申請中に女性を乱暴したとして、警視庁は22日、ともにトルコ人で埼玉県川口市前川、解体作業員プナルバシ・オンデル容疑者(22)と同市の無職少年(16)の2人を集団強姦と強盗の容疑で逮捕したと発表した。
 同庁幹部によると、2人は昨年12月27日午前0時半頃、東京都北区のJR赤羽駅構内で、酒に酔った30歳代女性に「大丈夫ですか」と声をかけて駅近くの公衆トイレに連れ込み、乱暴して財布から現金約9000円を奪った疑い。同庁は防犯カメラ映像などから2人を特定した。
 調べに対し、プナルバシ容疑者は「女性を乱暴して強盗をしたのは少年だ」と容疑を否認。少年は強盗容疑を認める一方、集団強姦容疑については「無理やりじゃない」と否認している。

 

【産経】 公衆トイレで女性乱暴し、金奪う 難民申請中のトルコ人2人逮捕 警視庁
 公衆トイレで集団で女性を乱暴して現金を奪ったとして、警視庁組織犯罪対策2課は集団強姦と強盗の疑いで、ともにトルコ国籍の埼玉県川口市前川の解体作業員、プナルバシ・オンデル容疑者(22)と、同市の無職の少年(16)を逮捕した。プナルバシ容疑者らは「無理矢理ではなかった」などと容疑を否認している。
 逮捕容疑は、平成27年12月27日午前0時半ごろ、東京都内に住む30代の日本人女性を東京都北区のJR赤羽駅近くの公衆トイレに連れ込み、乱暴したうえ、現金9千円を奪ったとしている。プナルバシ容疑者らと女性に面識はなかった。
 同課によると、プナルバシ容疑者らは昨年8月と10月に「親族間のトラブルがあり、トルコに戻れない」などとして難民申請をしており、審査中の期間に認められる「特定活動」の在留資格で日本に滞在していたという。
 周辺の防犯カメラの画像などから関与が浮上した。

当時の読売記事を読むとプナルバシ氏は当初から容疑を否認している。その一方で少年は強盗は認め、また「無理やりではない」という主張は性行為そのものは認めていると読める主張となる。産経に関してはプナルバシ氏の主張は一顧だにされず、プナルバシ氏と少年を一緒くたにしており「無理やりではない」という否認という表現となっており、未来の視点から見れば問題のある表現ともいえる。そして当時からすでに保守速報など、ネット右派系のサイトに「【衝撃事件】難民申請中のトルコ人、JR赤羽駅近くで女性を公衆トイレに連れ込み集団レイプ!!強盗強姦容疑で逮捕 容疑者「無理やりじゃない」」取り上げられており、今流布している報道画像も確認できる。この時点で「ネタ化」したと言える。そしてさらに拍車をかけてしまったのが2017年7月27日の朝日新聞による以下の無罪判決報道となる。

準強姦未遂罪に問われた被告に無罪判決 東京地裁
酒に酔った女性に乱暴しようとしたとして、準強姦(ごうかん)未遂罪に問われたトルコ国籍の解体作業員プナルバシ・オンデル被告(23)=埼玉県川口市=に対し、東京地裁は27日、無罪(求刑懲役3年)の判決を言い渡した。石井俊和裁判長は「被告も乱暴したとの共犯者の供述は変遷しており、多くの点で信用できない」と述べた。
 被告は2015年12月、知人でトルコ国籍の無職少年(当時16)=少年院送致=と共謀し、酒に酔った30代女性を東京都北区のJR赤羽駅近くの多目的トイレ内で暴行した、として逮捕された。逮捕時から一貫して否認し、準強姦未遂罪で起訴されていた。
 検察側は、女性の尻についた体液が被告のDNA型と一致したと主張したが、石井裁判長は「(性交とは無関係の)何らかの理由で付着した可能性があり、犯人の裏付けにはならない」と退けた。

この記事の最後にある検察側の主張した女性の尻についた被告の「体液」のDNAを裁判長が(性交とは無関係の)何らかの理由で付着した「体液」として犯人の裏付けにならないという判断が誤解を生む。例えば朝日報道後にぶんぐのぶろぐで「準強姦未遂罪に問われたプナルバシ・オンデル被告(23)に無罪判決 被害者に付着した体液は証拠にならず」という記事が書かれており、体液が注目されている事がわかる。これは性犯罪報道において「体液」が暗黙の裡に「精液」と解釈されること普通だからではあるが、そもそも判決文を読む限りはプナルバシ氏はそういった行動をしたとは言い難く、また記事には書かれていないが裁判上では女性の手助けをした際に裁判長が言う通りに性交とは無関係の体液が付いた、という解釈するのが適当だろう。ただし記事ではその様な事が非常にわかりづらい事もあって、それは冒頭の2024年や、下記の2023年にあった拡散の仕方を見ても「精液」文脈として解釈されていることは想像に難くない。


https://twitter.com/KojiHirai6/status/1661936306031849473


https://twitter.com/okada_2019/status/1662304373190586368

なお、少し話は遡るが2016年の産経には「プナルバシ容疑者らは昨年8月と10月(引用者注:2015年)に「親族間のトラブルがあり、トルコに戻れない」などとして難民申請」とあったが、現在流布している「JAPAN NEWS NAVI」には「2022年8月と同年10月に「親族間のトラブルがあり、トルコに戻れない」と主張して難民申請」となっており時系列が7年ほどいじられている。これはJAPAN NEWS NAVIが捏造したわけではなく、そもそも該当記事自体が「国家の不祥事」というブログが2023年5月28日にアップした「東京地裁が準強姦未遂罪で起訴されたトルコ国籍男性に無罪判決」からの丸パクリだからだろう。このブログ主(国家腐敗監視太郎)が何故2022年と判断したのかは不明だが、おそらくは単純に2023年5月末ごろにこの話題が流布し、スーパーに「去年12月」とあったから生じた勘違いと思われる。
 そして裁判の判決文だが、まずこの事件は当初の報道では「プナルバシ容疑者ら」と「ら」が付いているが、主犯は「ら」で括られている方の少年であり、少年の罪は認められて少年院に送致されている。この少年は酩酊した女性を多目的トイレに連れ込んで犯罪を犯したわけになるのだが、プラルバシ氏はこれを助けるために行動していたという主張であり、裁判ではそれが認めらた故に無罪という事となる。以下、いくつか重要と思われる点をピックアップしていく。

被告人が多目的トイレ内で性的行為に及んだことを示す客観的な証拠はなく,公訴事実を推測させる証拠としては,多目的トイレに入ってきた被告人が陰茎を露出させて,Aの頭を手でつかんだ旨の■■■の期日外尋問における供述があるのみである。他方,被告人は,多目的トイレ内で陰茎を露出させたことも,Aの頭をつかんだこともない旨を供述している。したがって,■■■の供述が,被告人の供述を踏まえてもなお十分に信用できる,と判断されない限りは,本件公訴事実については犯罪の証明がないことになる。
※被告人=プナルバシ、被害者女性=A、■■■=少年

 

(1) 供述の概要
多目的トイレ内でAとキスをし,床に横になった私の上に,下半身を露出させたAが,自分に背を向けてまたがるような体勢で性交した。被告人が,多目的トイレの外からドアを叩いて,[中で何をしているのか。」と言ったので,私がドアを開けると,被告人が中に入ってきた。被告人は,中に入るとすぐにズボンを少し下ろして陰茎を出した。被告人は,陰茎を出したまましゃがみ,四つんばいになっていたAの頭をつかんだ。また,被告人は,Aの腰の辺りを触ったこともあったが,そのときには,陰茎は出ていなかった。被告人がAの頭と腰の辺りのどちらを先に触ったかは覚えていない。

 

(2) 信用性の検討
ア(略)■■■は,被告人が陰茎を露出させた理由について,当初,セックスをしたいと思った(ように見えた)と述べながら,その後,尿意を催したのではないかという趣旨の発言をするなど,同一の尋問期日の中でその内容を変遷させている。さらに,■■■は,被告人が陰茎を露出させたのを本当に見た,と供述する一方で,陰茎をいつしまったのか,との質問に対して,自分がそれを見た時である旨を供述したり,陰茎の露出と,Aの頭をつかんだり,腰の辺りを触ったりしたとする被告人の行為との先後関係については全く覚えていない旨を供述するなど,露出の前後に関する供述は極めて不明確である。つまり,被告人による陰茎露出という出来事は,一連の事実の流れの中に位置付けることができないのであって,この意味でも,■■■の前記供述は,極めて唐突なものと評価せざるを得ない。
(イ、ウは省略)
エ なお,検察官は,Aを姦淫したことなどについては既に少年院送致の処分を受けていることなどから■■■には虚偽の証言をする理由がない旨を主張するが,■■■はAに対する姦淫について,供述時点においてもなお,同意があった旨を主張していることがうかがわれ,自身の言い分と整合性を取るために,その場に居合わせた被告人の行動についても虚偽の事実を述べるなど,虚偽供述をする動機が■■■にないとはいえない。
オ 以上の検討に鑑みると,被告人が陰茎を露出させて,Aの頭を手でつかんだとする■■■の供述は,それ自体,相当に怪しく,信用性が低いものと評価せざるを得ない。

 

4 被告人の公判供述について
(1) 供述の概要
多目的トイレの中から■■■の声が聞こえたのでドアを開けろと大声で言うと,■■■がドアを開けて私を多目的トイレに引きずり込んだ。そうすると,Aがお尻を露出した状態で床に四つんばいになっており,片手で下がった下着を上げようとしてできずにいたので,下着を上げるのを手伝ってあげた。

上記の被告人(プナルバシ)の供述についての信用性の検討部分は割愛するが、大きな矛盾はなく■■■の供述よりも信用が置けると判断されている。そして以下が「体液」に関する部分となる。

5 なお,Aの臀部の付着物から,一部を除いて被告人のDNA型と型が一致するDNA型が検出されているところ(甲28,37),被告人の供述によれば,Aが下着を引き上げようとしているのを手伝ったというのであり,その際に被告人に由来する何らかの体液がAの臀部に付着した可能性も否定できないことからすれば,この点は被告人による公訴事実記載の犯行を裏付けるものではない。

酩酊した故なのか被害女性側証言はないので何とも言えない部分があるのは拭えないが、「体液」に関しては■■■の証言を信じた場合においても、陰茎を露出させたことはあるがその陰茎を臀部に近づけたとはなく、腰のあたりを触ったこともあったという証言時には陰茎は出ていなかったという証言になっている。■■■の証言を単純に信じた場合でも「精液」が出る行動をしたかには少々疑問であるし、臀部につくと考えるのも疑問だ。プナルバシ氏の証言にある下着をあげるの手伝った時に汗などの何らかの体液が残ったと考えるのが妥当だろう。検察が第一審で終わらせている事からもこの事件は無罪で終わり、そして冤罪だったと判断できる。ただおそらくだけど、今後もまだこの画像はインターネット世界において使われる様な気はする。

■お布施用ページ
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「中澤琴/中野竹子/林田民子」とされる女性の写真は芸者「深川のお松」の写真

https://twitter.com/mokkorinight/status/1782546989827424268

 というのがバズっていた。これに対しては歌舞伎、芸者のコスプレ写真だという指摘があって投稿者自身もそう訂正しているが、ただこの情報自体にソースはない。ちなみに投稿者は写真の女性を「中澤琴」ととして紹介しているが*1、「中野竹子」と紹介されたり*2、「林田民子」と紹介されたりと*3、かなり人物はブレて紹介されている。要はこの写真の女性は「誰か」わからないのである。結論から言うと、実際にこの女性は誰であるかは分からない。ただ沼田市を拠点にしたプロジェクトのJosyu Entertainmentという「中澤琴新徴組」ではこの女性を含む写真を「※写真はイメージです」というキャプションを付けながらも使用していたりと、注釈を付けながらもちょっと危うい使用をしている。
 そしてこの写真だがまずはアメリカで広まったもので、それが日本に到達して拡散、そして上記の様に○○の写真という誤った紹介がされるに至っている状態となる。ネット上に出てきた時期はおそらく2013年初頭には確認でき、元々はオークションで”Portraits of Japanese Kabuki actors and geisha(歌舞伎役者と芸者の肖像)”と紹介されて売りに出されたのがきっかけだ。その商品説明と思われる文章は次の通り。

Unknown photographer. Portraits of Japanese Kabuki actors and geisha. 1870s. 34 albumen prints. Each circa 8,5 x 5,5 cm,5 x 9 cm and 21 x 27 cm (2). Each mounted to board (some traces of use), smaller prints 16 to a page.
Relatively early and unusual portraits of Kabuki actors and geisha. – Most smaller prints faded, especially in edges, some with light smudge marks, otherwise in good to very good condition.
(無名の写真家。日本の歌舞伎役者と芸者の肖像。1870s.34点のアルブメン・プリント。各約8,5×5,5cm、5×9cm、21×27cm(2枚)。それぞれボードにマウント(使用跡あり)、小さいプリントは1ページに16枚。
歌舞伎役者や芸者の比較的初期の珍しい肖像画。- ほとんどの小版画は色褪せ、特に縁に薄汚れ跡があるが、それ以外は良好から非常に良い状態。)
https://web.archive.org/web/20130107144421/http://194.25.171.19/bassenge/en/lose.asp?c=O&lot=4058&DET=1

上記のオークションカタログ(?)ページは見れなくなっているが、商品説明などはないもののこちらのオークションページは生きており、当然ながら同様のタイトルである事が確認できる。これが写真だけの見た目で芸者などの部分が抜けて「女武者」として扱われ(海外では2013年2月時点で「女武者」ではないという指摘がある事から、あちらでも不確かな情報が当初から広まっていることがわかる。)、今の様に歴史上の著名な人物に当てはめた紹介が行われるようになったと考えられる。女性が甲冑を着ているという「映える」写真であったために起きた現象だろうが、とりあえず写真の女性はそれらの人物ではない。


【4月28日追記】
https://twitter.com/MukashimonBunko/status/1573968427278270465

 幕末・明治期の古写真を蒐集しているというむかしもん文庫さんによればこの写真は「深川のおまつ」であるという。そしてこの「深川おまつ」について調べると以下の様な写真が見つかる。


出典:山口県文書館


出典:東京大学総合研究博物館所蔵 三宅コレクション

東京大学の方のページには”台紙裏鉛筆書「深川お松」”とある事から山口県文書館、むかしもん文庫さんの写真の裏にも「深川おまつ/お松」と書いてあるのだと思われるし、顔を見る限りは確かに類似点が見られるので写真の女性は深川の芸者おまつで良いのかなと。三宅コレクションを見ると複数の芸者の写真が見られるが、芸者の名前は大抵が記されていない。その中にあって名前が記されており、また複数の写真が残っていることから当時有名な芸者だったのではないか。


【5月1日追記】

 国会図書館などの資料からみる「深川のお松(おまつ)」についての追加情報を記しておく。


出典:潮(1973-04)

深川おまつ 明治7年ごろから和洋混乱時代 東京府が女子のザンギリ頭禁止令を出すほど〇髪がはやった。シルクハットをかぶった羽織芸者おまつは当時を代表するものだろう。
※〇は文字が見えない不明部分

上記は写真家の影山光洋が1973年の紙上で当時の芸妓についての写真で触れられている部分。左ページは木戸孝允の夫人である幾松、陸奥宗光の不振となる新橋小こすず、男殺しで毒婦として有名となった高橋お伝、明治初年に有名となった吉原太夫今柴の4人で1ページ扱いだが、おまつは一人で一ページを使用されている。現代に入ってからの簡単な検索で引っかかる彼女の人物に迫る記述は以上の様なものだが、戦前には以下の二点の様な記述が確認できる。

學鐙(1902年(明治35年)7月)
今より二十六七年前深川のお松といふ藝妓が其頃流行した男の外套、俗にヒキマハシと呼ぶ合羽を着て蝙蝠傘を翳した写真を今様姿として挿んである。封建時代の服裝ではまさかに間違へるものもあるまいが兎もかく明治の時勢粧であるから外國人は此二十六七年前の写真を以て今の風俗と思ふかもしれない。

上記は善松という人間が書いた文で、文脈としてはジョン・ラファージという人間が著した寄稿文「An Artist's Letters from Japan」の中で当時から3、4年前の著述にも拘らず二十数年前のおまつの写真が使用されているというものだ。なおこの文章はその後の1925年(大正14年)に内田魯庵がこの文章と類似の内容を「貘の舌」という書籍で書いている。

此書は明治三十年ころの著述だが、明治十一ニ年頃盛んに名を売った深川のお松という芸妓が其頃流行した男の外套、俗にヒキマワシと呼んだ雨合羽を着て蝙蝠傘を翳した写真を現代日本風俗として挿入している。

善松と内田魯庵との関係は本題ではないので置いておくが、かなり酷似した文章なのは違いない。内田魯庵は1868年の東京生まれなので明治11年1878年)ごろの風俗ならば知っている可能性はあるので何とも言えないが、善松の文章が前提にある事だけは間違いない。そして”An Artist's Letters from Japan(ある画家の日本からの手紙)”での「お松」がその恰好から次の絵と思われる。

 以上が簡単に検索した「深川のお松」に関する情報となる。当時の書誌を探せばまだわかることがあるのかもしれないし、「深川のお松」の写真自体は古本屋やオークションを探せばたまに見つかることがある。例えば魚山堂書店ではお松を含めた芸者2枚1セットの写真が売られおり、実物も確認したところ山口県文書館と同様と思われる写真が売られていた。これは当時の芸妓の写真がこの様に売られており、今風にわかりやすく言えばアイドルのプロマイド写真的な扱いだったのだろう。そして「深川のお松」は当時人気の芸妓であり、また残っている文章や写真からするとやや男性的な見た目を好んでする芸妓であり、そしてその分かりやすい例が冒頭の甲冑を着た写真であったのだろう。

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川口市の「大気汚染」をクルド人由来にし、「クルドスモッグ」と称するのはあまりにも理由が乏しい


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1778733016237621704


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1778738951135912269

 まずこの「警報」とはグーグルマップ上における「大気質」というレイヤーを選択すると見ることができる情報であり、なんらかの公的な警報、例えばスモッグ注意報などではない。


※この画像は4月13日0時ごろの該当地域の大気質

なお石井孝明がもらった画像がいつのものかは不明ではあるが、該当地域はどうやら頻繁に「グーグルマップの大気質情報」で警報が出る地域であることがSNS上で確認できる。


https://twitter.com/clm_ranran/status/1757306259211207160

上記は2024年2月13日の投稿だが、その他にも3月4日4月5日などでも類似の画像が確認できる。なお石井孝明はこの場所で「解体業の野焼きの影響の可能性」と言っているが、地図を見るかぎり該当地域で野焼きを出来そうな場所は荒川の河川敷くらいの様に見える。

「川口の荒川の河川敷で野焼きをする解体業者」がいるとは思えないし、その様な業者がいたらそもそもすでに問題視されているだろう。また以下の様にグーグルマップ上での解体業者登録を見ていくと該当地域に解体業者そのものは存在するが、この地域に固まっているわけでもなく、むしろ業者の少ない地域と言える。

該当地域は基本的には住宅街であるし、原因をというのならば荒川の川沿いにいくつかの工場が映っている。また地域の北側には朝日環境センターというごみ焼却場も存在する。これらはいずれも該当地域の周縁と言って良く、これらが主原因であるとまではいわないが、実態も目撃談もないターゲットありきの「某外国人の解体業者が野焼きをしている」可能性よりもましな憶測だ。ちなみに令和4年度の川口市環境報告書では次の様に大気汚染防止法に定められる施設設置事業者に対して立ち入り検査を実施し、不適合が3施設とある。

やはりこういった「施設」の方をまず念頭に置くべきだろう。なお大気質情報は「世界の大気汚染: リアルタイム空気質指数」ではより詳しく確認でき、川口市のここ二日間の情報(最終更新日は土曜0時)は次のようになっている。

これを見る限りPM2.5が高くなりがちには見えるし、2024年のデータを見る限り定期的にPM2.5は大きくなりがちに見える。

ただこのサイトの情報と現状確認できる川口市での「警報」の日付の情報とでは齟齬をきたしており(例えばグーグルマップ上では3月4日に警報が出ている「時間帯」があることはわかるが、上記情報の「カレンダー上の日付」では大したことはないように見える)、観測データは異なるのかもしれない。
 ちなみにグーグルマップの大気質情報に関しては「大気質」でXを検索すると他地域でも「警戒」はたまに出ていることがわかる。見ている人が少ないであろうし、定期観測をしているような人は流石に見受けられず、その中でも川口市周辺のこの警戒は目立つのか目撃投稿の数が多いのは事実だが、それ自体の原因が明らかにされているわけではない。ただ少なくともあたかも大気汚染の理由を下調べも全くしていない、歪んだ憶測だけの「クルドスモッグ」などと特定の人種由来にする語句を用いている時点で論外でしかない。それとさらにいうならば埼玉県は当然ながら大気の監視はしており、それは埼玉県大気汚染常時監視システムで個人でも確認可能だ。憶測だけの石井孝明に言われんでも把握してると思うよ。


【4月16日追記】  そもそも川口市における野焼きの件数について、令和2年(2020年) に4件の野焼きが発生している事はHP上で確認できるもののそれ以降は不明となっている。なので川口市に問い合わせをしてみたところ、以下の返答を川口市消防局予防課火災調査係より貰った。

川口市における野焼きの件数について、令和2年に野焼きが起因と考えられる火災が4件発生しています。
また、令和3年に1件令和5年に1件発生しています。
さらに、令和6年は発生していません
野焼きに関する関係者については、個人情報のためお答えすることはできませんが、野焼きの件数にあっては、今後ホームページに掲載させて頂きます。

つまりここ2020年~2024年4月現在、川口市の野焼き件数は合計6件という事となり、2020年を除けば野焼きは1年に1回あるかないか程度の頻度となる。個人情報となるためにその野焼きをしたものが日本人であるか、外国人であるかは不明ではあるが*1、少なくとも「クルド人が野焼きをしている」というのはかなり胡乱な情報であるし、たとえ過去にあったとしても今現在その数はとても少ないと言える。少なくとも「(クルド人の)解体業者が野焼きをしている」という説はほぼ成り立たないと言って良いだろう。

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*1:なお川口市の注意喚起ポスターを見る限り、トルコ語のポスターも確認できる。ただしこれが過去にあったからなのか、単純な注意喚起なのかは不明だ。

陸自幹部による靖国神社参拝についての計画資料

 事の経緯としては1月9日に陸自幹部が集団で靖国神社参拝したという報道が存在し、報道では実地計画が作成されて行政文書として保存されているという内容があった。なのでその資料を開示請求したところ、以下の二つの資料が開示された。

令和6年の年頭航空安全祈願ロジ

 以上の様な感じの実地計画がなされており、続くページでは「6 参拝要領」として記帳や本殿参拝の仕方、「7 移動」で各職務の移動方法、「8 管理事項」として服装(私服(ネクタイ着用のスーツ))、玉串料として各人2000円、「9 緊急時の対応」(この部分はすべて黒塗り)などが記載されている。そして全体の流れは次の様に記述。

計画内容に関するものは以上であり、その後の別紙として「靖国神社全般配置図」で導線の説明、「参加者一覧」(陸幕副長以外は黒塗り。凡例を見ると不参加者も存在か)、「参拝要領」として本田参拝までの流れ、署名の要領、席次、参拝手順を各1枚ずつ説明、「移動経路」が5枚、参考資料として「靖国神社の起源等」、「航空事故調査委員会組織図」(すべて黒塗り)、「自衛官の参列に関する根拠等」という構成になっている。この中で気になった資料をピックアップするが、まずは「靖国神社の起源等」。

この文面説明は靖国神社公式HPにおいてある「靖國神社の由緒」に似ているのだが、細部がほんの少し異なる(例えば資料は「靖国神社の起源は明治2年(1869)6月29日~」で始まるが、靖国HPは「靖國神社は、明治2年(1869)6月29日~」で始まり、資料には記載のない一節が入る。)。この参考資料とHPの起源の記述の差異については自衛隊の参考資料が靖国神社HPリニューアル前の文章を載せているから発生している齟齬なのだが、靖国神社のHPリニューアル自体は2018年の出来事であり、なぜそれが2024年資料に使用されたのかは不明。自衛隊内にそういう古い資料が残っていたのでそれを借用した、というのが一番合理的な考えか。そして「自衛官の参列に関する根拠等」には次のようなもの。

自衛隊靖国神社に参拝」となると問題になるのではないか、という批判を想定しての資料と思われる。これについては「③官用車の使用を控える」という部分について、当時の報道で公用車を使用しているために問題になっていたし「全般時程」にも官用車が記述されており、③の部分が計画中で守られていないよう見える。

令和6年の年頭航空安全祈願実地計画

 そして2つ目の資料は以上の様なものだが基本的には「安全祈願ロジ」と内容はほぼ変わらない。ただ資料に記述されている日にちが1月10日になっており(ちなみに黒塗り部分は「装備計画部」であることが黒塗り無しの文書を入手した共産党の穀田恵二議員により明らかにされている。)、9日の参拝は終了後となる。ただ、この資料によれば参拝の日時は以下の様に「1月10日 8時~」となっているし、全般自程も官用車から徒歩になっており、計画そのものが異なっている。

これ以降の資料は「安全祈願ロジ」と全く同一なので割愛する。この日時の違いが何故発生したのかは朝日新聞によれば能登半島地震の対応で参拝が前倒しなったからとなる。

この集団での参拝は、私人としての航空安全祈願として、事故調で同省勤務の1佐以上を中心とした41人に案内を出し、参加したのが22人だった。行政文書の「実施計画」に参拝を定めていたが、幹部を含む参加者の所在を省内で共有するためだったという。当初は10日朝に参拝する予定だったが、能登半島地震の対応で早朝の会議が連日入ることから9日午後に変更。小林氏は移動手段をタクシーから公用車に切り替えたとされる。
陸自幹部が集団で靖国参拝は「部隊参拝ではない」 防衛省が調査結果

なので資料的には「1月10日」と書かれた資料が古く、「1月9日」と書かれた資料の方が新しいものだと考えられる。

■お布施用ページ
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クルド人の春の祭り「ネウロズ」において、「テロ組織PKKの制服」を着ていたとはいえないのでは


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1770405710658158778

 手短に。まずPKKがこの様な服を着ていることは事実として存在する。


出典:www.aljazeera.com

これだけを見れば「PKKの制服」という推論も不思議ではないとはいえる。ただし、そもそもこの衣装は「PKKの制服」というよりもクルド人にとっての特別な日に着る民族衣装的な性格があるように思える。例えば2015年のトルコ語の記事「Şal û şepikler Newroz'a hazırlanıyor」に次のようなものがある。

シャル・ウ・シェピックを「テロ組織の制服に似た衣服」であるとして禁止する「国内治安パッケージ」法草案への反応が続く中、ハッカリのユクセコヴァ(ゲヴァー)地区の市民は、来るニューロズ祭を前にシャル・ウ・シェピックに特別な関心を示している。
(略)
ゲヴェル文化芸術協会の幹部の一人であるアイハン・クズルドアンは、クルド人の民族衣装の禁止は悲劇であると述べた。つまり、この組織は自分たちが戦う民族の民族衣装をユニフォームにしているのだから、それを禁止することはできない。
※自動翻訳

※記事内の写真

このシャル・ウ・シェピック(Şal û şepikler)が件の衣装のことなのだが、これが「国内治安パッケージ」のという法案ではテロ組織(PKKのことか)の制服に似た衣服であるから禁止するという内容のもので、記事にはこの服が逮捕の理由になっていることも窺える。また上記法案が議論された際にSNS上では反対として件の衣装を着るというムーブメントの様なものが一部であった事が「Sosyal medyada 'Şal u Şapik' tepkisi」という記事でわかる。これらの記事を読む限りはŞal û şepiklerは歴史の中で継続してきたであろう「民族衣装」であるのだからこの服装を以てして「PKKの制服」と捉えるのはトルコ政府に親和的な解釈でしかなく、まずは民族衣装と捉えるのが正解だろう。ちなみに外国のネウロズにおいても同様の服装をしている人間を複数確認できる。

asopress.com

いずれにしても「この服はテロ組織PKKの服装ですね」と石井孝明は断言しているが、この服装は民族衣装的性格があるものであり(故にPKKはこれを衣装ともしているのだろう)、断言するには根拠が薄弱といえる。物事の裏どりが出来ているとは到底言えず、ただ自身の偏った知識による偏見を述べているに過ぎない。


【追記】
 補足として。「Şal û şepikler」は自動翻訳で直接的に訳せば「ショールとスカーフ」となるのだが、必ずしもPKKが着ている様なカーキ色でポケットありのものだけではない。


https://www.indyturk.com/node/40596/ya%C5%9Fam/


https://www.vanolay.com/vanda-dugunlerin-vazgecilmezi-sal-u-sepik-ve-kiras-fistan

「一般的」にどちらが主流なのかまでは不明だが、このようなスタイルの「Şal û şepikler」も存在はしている。ちなみにインスタグラムで「Şal û şepikler」のレンタルや販売をしている業者のアカウントを見る限りはどちらのタイプも存在しており、やはり「PKKの制服」と断ずることは難しいと思われる。


【追記その2】
 今回のネウロズはクルド人が主体となった祭りであるし、この面で注目されている。そんな中、上川外務大臣ネウロズ(ノウルーズ)を祝った事で若干炎上した。


https://twitter.com/MofaJapan_jp/status/1770288437851214167

これは外務省が(クルド人の祭りである)「ネウロズ」を祝ったという解釈でのプチ炎上なのだが、文面を見ればわかる様に「諸国民」に対するメッセージであり、記述URLでは次の様な補足説明がなされている。

ノウルーズとは、ペルシャ語で「新しい日」を意味し、バルカン半島黒海沿岸地域、コーカサス地域、中央アジア、中東、その他の地域で新年の元日として祝われる。

元々は太陽イラン暦における新年の祝い事であって*1、該当地域は上記の様にかなり広いと言える。外務省が該当地域の諸国民に対して新年の祝いを述べるというのもさほどおかしくはない。日本で一部が注目していた「ネウロズ」ではなく、念頭にあってもおかしくないが基本的には世界的な暦の中での祝いの言葉ととるのが通常だろうと。むしろこれに対して違和感を覚えている人間は結局探ることや思考を誰かに託して憎悪煽動されている人が多いのではないかなと思ったり。

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*1:詳しくは英語版wikipediaなどを参照してください。

越谷市の「蒲生モスク」は「クルド人の為のモスク」ではないのでは


https://twitter.com/nonsuketyan/status/1766687013997269418

 写真は越谷市にあるモスク「蒲生モスク」だ。運営団体は2011年に設立された一般社団法人ISLAMIC CULTURAL FOUNDATION JAPANであり、公式HPは英語のみで構成されていることから基本的に日本人向けとは言えない施設であるとはいえる。投稿者は「クルド人の為のモスク」としているがフェイスブックを見る限り、この団体はベンガル語で発信しており、つまりはバングラデュ出身の人間がメインであろうことがわかる。越谷市HPの外国籍市民数(2023年12月)を見るとバングラデシュ籍の在住者数は5位で、その人数は329人。かたやクルド人が内包されるトルコ人は10位の台湾158人を下回り、「その他」に含まれるほどに少ない。SNS上ではこのモスクについて「国内バングラデシュ人 ムスリムグループの結晶」との投稿も存在する事から、利用者そのものはいてもおかしくはないが蒲生モスクを「クルド人の為のモスク」と言い張るのはおかしい。なおHPによる施設の来歴は、2003年時点に収容人数が70人ほどのモスクは存在したがイスラムコミュニティの増加による問題から2019年に新たなモスクプロジェクトを立ち上げ、全国を回って慈善融資を募っていると読める(HPには2022年3月までに1億5000万円の寄付を受け付けたとある)。このプロジェクトによって2021年に蒲生モスクが誕生したことになる。
 そして越谷市議からの情報としての「越谷市が事務局」だが、団体や越谷市のHPを確認する限り該当モスクが事務局が市である事実、つまりは宗教施設の事務局が市のわけがない。これが「越谷市に事務局」ならば意味は通るし、過去には越谷市議から「拠点は越谷市」と聞いたという投稿をしている事から、これは「越谷市が事務局」ではなく「越谷市に事務局」という日本語表現の誤ちだろう。


https://twitter.com/nonsuketyan/status/1753012730066579871

ちなみにこの「越谷市議」は自民党のたつざわ貴明氏の事であり、該当情報は以下のリプライの事かと思われる。


https://twitter.com/tatsuzawa1125/status/1752983336082079889

のんすけちゃんが述べている「あのモスク」は蒲生モスクの事と思われるのだが、この前段のやり取りは次の様なものとなる。

発端となっている削除された投稿ものんすけちゃんのものなのだが、現在アーカイブなどに該当投稿はおそらく存在せずにどの様な内容のものだったのかは不明である。ただし残存するやりとりを見る限りはどうやらベトナム国旗の存在をよく知らない状態なのか「越谷に(ベトナム国旗でカモフラージュした)クルド人の為の店がある」という様な事を言っていると思われる(しかしのんすけちゃんは以前にベトナムの外国人技能実習生が企業に搾取されていることに複数回怒りを表明していることからベトナム国旗を知らないとも思えず、何故クルド人と関連付けのか不思議だ。

https://twitter.com/nonsuketyan/status/1752946187299414335


https://twitter.com/TV65377118/status/1752962513187336345


https://twitter.com/xuexitaiyu/status/1752972969746542680

なおこの店はベトナム食品店なのだが店舗としては新しくグーグルマップやストリートビューでその外観などを確かめることは出来ない。なので現地を訪れてみたが、店の外観は以下の様なものだった。

ベトナム国旗部分は風によって棒に巻きついてよく見えない状態だったが、道路から見える形でベトナム食品の店であることがわかる様になっている。この部分が当時あったのかまでは不明ではあるが当時のやり取りを見る限りは存在したと思われる。少なくともこの店舗を見て「クルド人」に関連づけるのは想像力が豊かすぎる。筆者が訪れた時には客は一人も見かけなかったのでなんとも言えないが、「お客はクルド人」というのも怪しく、訪れていたベトナム人などをクルド人と勘違いしたのではないか。そもそも「ベトナム国旗でカモフラージュした店」であるかの判断はどう考えても発想の飛躍であり、断ずることは無理だ。ただ越谷市在住のベトナム人は2023年12月現在で約1100人で越谷市在住外国籍市民では2位の人数である。「普通」に考えればベトナム国旗でカモフラージュした店ではなく、ベトナム人をメインターゲットにした店だろう。


【3月15日追記】


https://twitter.com/nonsuketyan/status/1753027733897330886

投稿が削除されたのは店から抗議を受けてとのこと。のんすけちゃんの投稿内容を想像するならば正当な抗議だと考えられる。


 またのんすけちゃんの元投稿には「恐ろしい事に他の県にも事務所がある」とも書いてあるしたつざわ市議の情報にも「拠点は越谷ですが他県にも事務所とある」。しかしHPやフェイスブックで該当団体の住所は蒲生モスクだけであり、他事務所の記載はない。2022年にまとめられた早稲田大学の店田廣文名誉教授の「イスラーム関係団体の法人化に関するデータ」を参照すればわかる様にあえて言えば全国各地にモスクが存在し、そのモスクにそれぞれの管理団体がいるという事はいえるだろうが、ISLAMIC CULTURAL FOUNDATION JAPANの拠点が越谷市で他県に事務所があるという情報は疑わしい。「日本人Cね」については以前指摘したが聞き間違いから端を発したデマであるし、つまらない突っ込みだが「観光ピザ」は「観光ビザ」だ。いずれにしてもイスラムフォビアクルド人バッシングを念頭に置いた意図的な混同なのかは不明だが、のんすけちゃんの冒頭の元投稿は文字通りの日本語で読んだ場合、事実と異なる表現をしている。
 この投稿者の「のんすけちゃん@nonsuketyan」は去年ごろからモスクに関する投稿が増えてきており、中には下記の様に「彼らのバッグには手引きして、モスクも用意している組織がいます!」などの陰謀論的な主張が垣間見える。


https://twitter.com/nonsuketyan/status/1676388183305760768


https://twitter.com/nonsuketyan/status/1676557978944827392

下の投稿では川口市長の奥ノ木信夫氏を「共産党系」と書いているが、奥ノ木氏は2022年選挙で「自公推薦」であり、共産党の支持は受けていない。埼玉県知事の大野元裕氏は無所属で自民、公明、立憲、国民、維新の与党を含む推薦を受けているので「立憲の大野知事」は誤りであるし、その際の県知事選には共産党は独自候補を立てているしで、この投稿者は基本的な情報の理解が出来ていない様に見受けられる。これは蒲生モスクの利用者についても同じことが言え、バングラデシュルーツの方がおそらくメインであろうに該当アカウントは彼らの存在を一切不可視化し*1、「クルド人」だけをピックアップするという不可思議な状況になっている。


https://twitter.com/nonsuketyan/status/1751464329298444769

これはイスラム教の地域への流入によって生じた「モスク」からのイスラムフォビア、そしてそこに近年の「クルド人問題」を混ぜ合わせて出来た陰謀論的世界と隣り合わせの人間が発したデマだと言える。調べれば見えるであろうものを見ずに、見えないものを積極的に見ようとするのは危ない。


【3月15日追記】
 越谷市に問い合わせをしたところ以下の様な返答を頂きました。

ご指摘のとおり、本市は大間野町二丁目にあるイスラム教のモスクについて、バングラデシュ国籍の方が中心となって運営されていることを認識しております。
なお、越谷市がこのモスクの事務局になっているという事実はございません。
また、市では外国人市民と日本人市民が互いにちがいを認め合う多文化共生社会の実現のため様々な施策を展開しています。
大間野町二丁目のモスクには、これまで本市が実施した外国人向けの事業に参加者として参加していただいたことや越谷警察と協力して合同の防犯パトロールを実施したことがございます。
併せて、本市の必要な情報を外国人市民へ提供することを目的に、毎月一回発行しているお知らせ「コシガヤ・メッセンジャー」をモスクへ配布しております。
越谷市 市民活動支援課 国際化担当



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*1:該当アカウントを「バングラデシュ」で検索しても一件もヒットしない

鳥山明がドラゴンボールをパチンコ/パチスロ化を断ったとされる際に用いられる美談的エピソードは捏造コピペじゃない?


https://twitter.com/discozombie104/status/1765943507326529858

 かなり拡散しているがデマ。事実として鳥山明作品がパチンコ/パチスロ化を許諾しなかったという事実は存在する。ただし、上記の様にメディア上で鳥山明がパチンコ/パチスロ化に対して明確な反対理由を述べたことは一度もない(はず)。しかしながら何故か上記の様な「(捏造)エピソード」が流布されている。これは例えば2023年10月にジャンプ速報が「【驚愕】鳥山明さんが『ドラゴンボール』をパチンコ台にしない理由、ついに判明wwww【ドラゴンボール】」といったまとめ記事を出したりと、最近においてもまとめサイト系による影響が大きいと思われる。この捏造に対してはにぐるた氏の「加熱済み宇宙食4691パック」の下記ブログ及び、氏の資料置き場が詳しい。

niguruta.hatenablog.com

niguruta.web.fc2.com

この記事でほぼほぼ精査は終わっているのだが、少しだけ補足が可能であったのでメモ的に残しておく。まずこの捏造エピソードに関しては二つ存在する。

2005年バージョン
183 名前:番組の途中ですが名無しです[sage] 投稿日:2005/10/27(木) 21:04:43 id:V0kE5vzY0
鳥山「この前もパチンコ会社からドラゴンボールで作らせてくれってきましたよ(笑)でも、きっぱりと断りました」
─なぜですか?
鳥山「私は自分のキャラクターが、パチンコという大人の賭博に使われるのが我慢ならないんですよ。漫画を大人の賭博に使って、お金のために誇りを捨てる人たちがたくさんいる」
─たとえば誰ですか?
鳥山「誰でしょう?(笑)たくさんいるじゃないですか。私は絶対に、パチンコに作品を売ったりしませんよ。だってそうでしょう、自分の子どもを賭博屋に売る人間がいますか?」

 

2009年バージョン
175 :マロン名無しさん[sage]:2009/02/12(木) 08:24:42 ID:???
おいおい大丈夫なのかお前ら。ていうかマロン住人。
ここまでソース一個もなしとかありえんだろ。
まあ>>1も微妙に(ていうか大幅に)いじってあるんだけど。
確認できるのは「寺田克也全部―寺田克也全仕事集―」収録の鼎談だな。
424頁中段から。
捏造とか抜かしてたマヌケは今すぐ買って十回読め。
以下抜粋。
鳥山「こないだも某パチンコ会社から来たんですよ。ドラゴンボールでパチンコ台作らせてくれって。
まあその場は忙しいって切って、後日担当を通じてキッパリと(笑」
寺田「断るの苦手ですもんね、鳥山さん。」
鳥山「勘弁してくれよというね。やっぱりイヤじゃないですか。
子供たちのために、ためにって言ったら押し付けがましいんですが、
そういうキャラクターが、パチンコはねえだろっていうね。」
―やはり抵抗が?
鳥山「そりゃそうでしょ。自分の子供をサ(検閲)売るみたいなもんじゃない。」
寺田「さらりと危ない発言が(笑)。でも本当そうですよね。
まあ俺なんかそのサ(検閲)を楽しんでるんですけども(苦笑」
この本は他にも金子一馬との対談とか載っててえらく豪華なんだが
なぜか「ペインタボン!」の大友克洋対談ばかり取り沙汰されるんだよな。
買うのがそういう層だってことか・・・。
176 :マロン名無しさん[sage]:2009/02/12(木) 08:39:46 ID:???
ちなみに文脈は
鳥「寺田くん、競輪とか行く?」
寺「賭け事はちょっと。パチンコくらいですかね。今ってルパン3世のタイアップとかしてるんですよ。」
鳥「ああ、なるほど。」
―先生の作品もいつかパチンコになるかも・・・。
鳥「いやいや、それはありません!これは断言します。」
寺「おお、なんでまた。」
という流れ。
99年当時はタイアップ機があまりなかったことに注意。

この2009年バージョンは「寺田克也全部―寺田克也全仕事集―」の424頁中段をソースとしているが、該当書籍は298頁となり、存在しないページをソースとしている調べればすぐわかるネタ(捏造)だ。そして検証ブログのコメント欄に自称とはいえネタを書いた張本人が暴露している。

あくまでも「自称」であるのだが、そもそも自分が張本人であると嘘をいうメリットもほぼないことからこの証言は真実性は高い(愉快犯なら別だが……)。ただ「ネタ」を検証しない人間によって広まってしまったデマであるといえる。
 そして2005年バージョンだが、それに入る前に。そもそもこの版権物のパチンコ/パチスロ化の話は北斗の拳パチスロ化(2003年)による人気などが背景に存在してる。にぐるた氏の集めた資料では2004年5月には鳥山明がスロット化を断ったという噂が既にみえるし、件のコピペが登場する一日前の2005年10月26日にはCRドラゴンボールが開発中という噂に対する質問に対して「鳥山さんがパチンコ嫌いとか子供の夢をパチンコにするなとかいろいろ言われてますけどね」という回答が存在していたりなど、2004年から2005年ごろにかけてドラゴンボールのパチンコ/スロット化が幾度が噂になり、そしてそれを鳥山明が断り、それは子どもの夢云々という理由付けがされていることが窺える。そしてにぐるた氏の集めた資料では10月27日の書き込みが10月28日の「2ちゃんねる観測衛星」という場所に件の書き込みが転載されている事が記録されている。この観測衛星の他に10月30日にニダー速報の「ドラゴンボールの朝鮮玉入れがない理由 」などを経由して広まっている事がわかる。しかしながらこれらの転載はスレッド名がわからずにソースが辿れない状態になっている。当方もこのスレッド自体は見つけられなかったが、その数時間後にニュース速報の「10/17よりパチンコは「朝鮮玉いれ」に名称を変更いたしました。5」の498(10/28(金) 00:05)において件のコピペが貼られる事は確認できた。

498 :番組の途中ですが名無しです: 2005/10/28(金) 00:05:37 id:u7lGge5V0
鳥山「この前もパチンコ会社からドラゴンボールで作らせてくれってきましたよ(笑)でも、きっぱりと断りました」
(以下略)

スレッド名の最後に「~5」とある様に当時のニュース速報では次のような嫌韓を伴う反パチンコスレッドが続けざまに建てられていた。


https://tamaire.nomaki.jp/

10月27日前から存在するスレッドを見ても「10月27日の書き込み」は見つからなかった為に初発と思われる書き込みはこのシリーズ化したスレッド以外で行われたであろうが、ただ当時のニュース速報での雰囲気はある程度察せられる。そして上記のリンクを貼ったスレッドにおいても特にソースは貼られていない。ちなみに11月6日に「鳥山明「宮崎駿はお金のために誇りを捨てた」」という件のコピペから始まるスレッドが建つが、そのスレッド内でもソースは?であるとか、いくつか捏造だとの指摘が既に存在する。また「最近」出回っているとの投稿もあり、つまり当時このコピペが拡散し、しかしそこにソースは全く存在していなかったことがわかる。なお脇道だがこのスレッド名に何故「宮崎駿」の名前があるかというと当時「CR未来少年コナン」がリリースされたからであるが、コピペにおける”鳥山「誰でしょう?(笑”の「誰」が宮崎駿を指していたかは不明だし、未来少年コナンの版権は日本アニメーションが持っているので宮崎駿は関係ない。
 そして冒頭の投稿内容に戻るのだが、「子供のヒーローが賭博に~」と書いており、実は2005年、2009年のバージョンとも表現が異なる。さらに言えば「子供のヒーローが~」という言い回しによる流布自体が過去にない。ディスコゾンビ104氏がなんらかの確かなソースを持った発言ならば別だが、そうではない場合、伝言ゲーム的な新しいデマが生まれた瞬間でもある。鳥山明が自作品をパチンコ/パチスロ化しなかったのは氏の意向である事は確かだろうが、捏造エピソードで「美談」を盛る必要はない。



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石井孝明が元ガソリンスタンドの場所をクルド人解体業者が解体してると懸念しているが、ガソリンスタンドが存在したのは35年以上前の話


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1764436305499525545

「元ガソリンスタンドの場所」と書いてある。さて、場所に関しては遠くの方に亀戸ビアなどの文字が見えるために簡単に場所の特定はできる。該当住所は「東京都江東区亀戸2丁目8−3」とみて間違いない。そして取り壊される前の店舗は「Honda Cars 江東 亀戸天神店」となりディーラーであってガソリンスタンドではない。

該当箇所はグーグルストリートビューでは2010年1月まで遡ることができ、その際の店舗もHonda Carsであってガソリンスタンドではない。インターネットアーカイブならば該当店舗のHPは2007年には確認可能であるし、さらに言えば会社設立日は1988年01月01日となっている。


https://twitter.com/cdas_command/status/1764459528903381162

同様の説明をしているアカウントがあったが、それに対して以前は石井孝明はガソリンスタンドだと地元民から聞いているとしている。では、実際どうなのか。これを過去地図から探っていく。

【1983年 江東区地図(ゼンリンの住宅地図)】

1984江東区地図(ゼンリンの住宅地図)】

【1988年 江東区地図(セイコー社 東京の住宅地図江東区)】

以上の様に1983年までは「KK天神モータース」となり、ガソリンスタンドの表記はない。これについては81年も同様の表記となっている。それが1984年からは日本石油による天神給油所モータースとなり、ガソリンスタンドであった事が確認できる。85年の表記も同様にガソリンスタンドとなっている。86年については資料が存在しなかったために不明だが、87年になるとガソリンスタンドの表記は消え「天神モータース」へと表記が変化していた。そして88年には「ホンダプリモ天神」へと変化しており(なおゼンリンの88年版地図では「天神モータース」のみの表記となりホンダの文字はない)、これはアーカイブに残っている88年設立という情報と一致する。つまり「東京都江東区亀戸2丁目8−3」には地図上で確認する限り84年と85年にはガソリンスタンドが存在しており、確認は出来ていないが86年もおそらくは存在していたと考えても良いだろう。ただし、83年以前のゼンリンによる地図上の表記を見る限りはガソリンスタンドがあったかは少々疑問であるし、88年以降に至ってはディーラーであってガソリンスタンドでないことは確実だ。こうなると確かに件の場所は「元ガソリンスタンド」であるという文言自体は事実であるが、しかし35年以上前にガソリンスタンドはなくなり、その後にディーラーになっている。この際に建て替えなどが発生していると考えるのが妥当であり、もしもこの土地に問題が残っているとしたらそれは当時の業者や検査の問題になり、そしておそらくは日本人業者の問題になるだろう。勿論、もしもその当時の「杜撰な結果」が残っていたならば新しい解体業者が対応する事にはなろうが、石井孝明の投稿による情報ではその様な事は一切読み取れない事になっているし、氏のリプライを見る限りは解体前の施設情報を調べているのかも怪しく、「地元民」の情報をただ鵜呑みにしたように見える。
 さらに言えば拡散している投稿は午前8時42分で約30万回のインプレッションを稼いでいるが、11時19分に以下の様なこの投稿案件からは身を引いたと思われる投稿をしている。


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1764475777192792416

業者からの説明で合法に行われているとしているし、「この写真のみで、続報は無しにします。土壌検査はしてるそうです。」と自身の言説と影響に無責任且つ自身の邪推を謝罪することもなく、また邪推の理由を「複数の住民」に投げている。さらにカーディーラーは改造で対応し、スタンドのタンク処理をしたと業者が言っているというが、地下にタンクがあったとしても改造時にも相応の対応はされているはずだ。


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1764555407799071018

また石井孝明に対して解体業者と思われるアカウントが実際のものとも思われるタンク解体の安全管理指導票を提示している。このアカウント自体は活発なアカウントではなく信ぴょう性の図り用が難しいが、画像はネットに流れているものでもなく城東消防署も該当箇所の管轄だと思われる。


https://twitter.com/mhsahinnn/status/1764480001184092658

この安全管理指導票があったから必ずしも安全に解体したとはなりはしないが、しかしそれを言ってしまえば石井孝明は解体の「プロ」ではない。もしも素人目に違和感を覚えたとしても問題提起するならば業者の説明を待ってからで良いはずであるし、「元ガソリンスタンド」にしてもそれが何時存在していたのかを精査してから世に訴えるのがジャーナリストではないのか。「カーディーラーは改造で対応」という投稿に「解体元請けは説明」とあるが、つまり石井孝明の初期投稿は取材前に「元ガソリンスタンド」以上の事を知らずに特に裏付けもせずに感覚で危機感を煽っていたと白状しているに等しく聞こえる。石井孝明は「ジャーナリスト」を自称しているが、この一件は氏の「ジャーナリスト」としての精査能力や責任が欠如しているのではないか。


【3月5日追記】
 石井孝明氏からリプをもらった。

大事なことなのか何故か三回も似たような内容なのだが、とりあえずは氏の取材の結果として悪質な業者ではないと判断したとのこと。  



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